プロの教えるシロアリ対策とその基本
シロアリが発生したとき、どう対応したらいいか分からない人がほとんどだと思います。 いざ、そういう状況になった場合にどう対応したらいいか、プロの見地から詳細に解説していきます。
第一章 シロアリ対策の基本
シロアリ対策の最も重要なことは住宅をよく観察、手入れすることで住宅に起こる変化を感じることです。そうすることが住宅を長持ちさせる秘訣です。大切なことは日常的な観察により悪化する以前に対策と予防をすることです。しかし、対策とは何をすれば万全といえるでしょうか? やるべきことはまず「自分にできる対策」と「専門家へ依頼すること」を理解することです。 これからはシロアリの対策の基本について詳しく解説していきます。
家の周囲編
<自分にできるシロアリ点検>
まずは住宅の周囲をしっかりと点検して下さい。それが何よりのシロアリ対策です。シロアリの対策といっても被害を見つけなければ始まりません。見過ごすと悪化する一方なので点検する習慣はつけておきたいところです。 そこで点検する際には以下のチェックポイントを参考にして点検して下さい。 1. 基礎コンクリート(基礎)と呼ばれるところに不自然な土の道筋はないかどうか
2. 基礎に設置されている換気口がエアコンの室外機や荷物などで塞がれてないか
3. 庭などの土の上や住宅の周囲に廃材や薪などの木材が置かれていないか
<自分にできるシロアリ対策>
湿気はシロアリが好む場所です。そのため換気口が塞がれると湿気がしっかりと排出できずにシロアリを呼び込みやすい状態になります。対策としては換気口の前には物を置かないことが大切です。 地面に置かれた木材もシロアリの餌となります。木材を廃棄せずに置いていると持ち上げたときにシロアリがいることが良くあります。廃棄等できない場合はビニールシートを木材の下に敷いて土との接触を遮断しましょう。他にも周囲のものを片づけたり、雑草をこまめに処理することが対策として効果的になります。
床下編
<自分にできるシロアリ点検>
床下はできることなら潜り点検して下さい。畳を一枚上げて床板を外すか、ダイニングにある床下収納庫を上げると床下に入れます。できる範囲で無理なく点検しましょう。 床下に入る場合は厚手の靴や服、軍手、懐中電灯、ドライバーなどを用意し入りましょう。その時にチェックするべきことは以下の通りです。
<自分にできるシロアリ対策>
床下では作業できる範囲が限られてきます。感電などの危険性も存在するので注意する必要があります。床下においては対策よりも点検をしっかり行い、もし不具合が発見された場合は専門家に対策を依頼するのが最も得策といえます。
配管に不具合がある場合は処理しなければ床下は常に湿気の多い状態になります。水漏れを発見した場合はすぐに専門家に依頼しましょう。そうすることでシロアリの好む土壌を防ぐことができます。
シロアリ被害は床下全体を処理しないと、被害箇所が移るだけで意味がありません。
蟻道を見つけたり、ドライバー等が木材に入り込むようであればそれはすでにシロアリの生息している可能性が非常に高いです。これらの状態であれば専門家にすぐに依頼し駆除してもらいましょう。
屋根編
<自分にできるシロアリ点検>
2階の窓から1階の屋根を見たり、はしごなどを用いての点検で、屋根をチェックするようにしましょう。場所が場所ですので怪我にだけは気を付けて下さい。
点検するときの参考として以下のことをチェックするときに意識してみて下さい。
1、瓦屋根がずれ、割れ、がたつき、浮きのような状態に見えるか
2、金属板の屋根が浮き上がり、がたつき、塗装の色あせ、さびのような状態に見えるか
3、落ち葉が溜まっていたり、雨どいの割れがないか。
シロアリは床下に生息しているという認識が一般的です。それは間違いではないですが雨どいの不具合や雨漏りが原因で濡れ続けると外壁の中で木材が湿ったり腐ったりしていることがあります。しかしよく見るような場所ではないのでシロアリに狙われやすい放置された状態になりやすいです。
<自分にできるシロアリ対策>
屋根の上には落ち葉やごみが溜まりやすいです。もしそうであれば長い棒や竿などを用いて屋根から落としましょう。雨どいには落ち葉が溜まりやすいので取り除くことを心掛けましょう。雨どい等の割れであれば市販で売られている補修テープで補修しましょう。
しかし基本的には専門家に任せる方がいいでしょう。何故なら時間の経過とともに修理箇所から水漏れしたりするのでどこまで補修した大丈夫かという見極めが素人には難しいからです。
屋根の補修は先ほども解説したように怪我のリスクもあるので注意が必要です。また補修箇所をより悪化させてしまうこともあるので専門家に依頼するのが一番いいでしょう。
屋根の不具合は雨漏りを引き起こします。シロアリ(※)は一般的に地上1メートルの範囲に生息しますが、雨漏りなどで住宅の柱が水分を含んでいる場合は2階まで登ることもあります。
※ヤマトシロアリ
まとめ
シロアリ対策(予防・駆除)の基本は点検です。自分にできることは、面倒でもお金をかけずにできる対策の第一歩として、実践してほしいと思います。
こまめに点検することでいつ状態が悪化したかを把握しやすくなります。一番避けたいのはいつから被害があったのかを正しく把握できずに不安になることです。
定期的に点検することを基本としながら不具合を見つけ次第一度、専門家へ相談するのが、シロアリ対策の基本だといえるでしょう。
第二章 プロの対策方法
シロアリは土の中や木の中に生息し、プロでないと完全な駆除は難しいです。ここではプロの実際の対策方法について詳細を解説していきます。
シロアリ駆除の基本処理には、大きく3つあります。
・木部処理(せんこう注入処理、木栓処理、吹き付け処理)
・土壌処理
・上回り処理
これらの処理を住宅の構造に沿って行うことでシロアリを駆除できます。具体的にプロがどう処理していくかを解説していきます。
シロアリ駆除の基本処理【木部処理編】
<第1段階:せんこう注入、木栓処理>
※「せんこう(穿孔)」とは、穴をあけることなどの意味を指します。
木材はシロアリの侵入経路や住処にもなるので表面のみならず内部まで処理します。そこで使うのがドリルです。
1、柱と土台、束柱と大引きなどの地面と触れている部分や木材の接合部付近にドリルを当て穴を開けます。
2、開けた穴に対してノズルを使用し、木部処理剤を注入します。(注入処理)
<第2段階:吹き付け処理>
せんこう注入、木栓処理をシロアリの侵入経路となりやすい箇所に行った後に土台、柱、束柱などの表面に薬剤を吹き付けます。吹き付けにむらが生じると薬剤のしっかり吹き付けられてない部分からシロアリが侵入してくる可能性があるので薬剤が満遍なく浸透するように処理します。
プロが実践している木部処理のポイント
水回りや玄関の下、シロアリが実際に発生している箇所は特に入念に処理を行います。
せんこう注入、木栓処理の通常の処理ではなく「千鳥せんこう」という方法で入念に処理します。隠れたシロアリには住宅の構造を把握し的確に処理することで狭く暗い床下なども正確に処理できます。
木材に吹き付ける薬剤には防腐成分が含まれているため木材処理で腐れの原因になることはありません。
シロアリ駆除の基本処理【土壌処理編】
シロアリは住宅に侵入するとき床下の土壌から侵入してきます。これはシロアリが土の中に生息しているためです。そこでこの土の中からの侵入を防ぐために床下の土壌に薬剤によるバリア層を作ります。
基礎の内側や配管付近は特にシロアリによる侵入が多いので集中して駆除の薬剤を散布します。
プロが実践している土壌処理のポイント
駆除に使う薬剤は、薬剤を水で希釈して使いますが、庭や周囲に池や井戸などがある場合は注意が必要です。ただし、公益社団法人 日本しろあり対策協会で認定された安全性が高く、低臭性の薬剤を用いていますのでとても危険というわけではありません。
粒剤という粒状の薬剤を使用する場合は万が一に薬剤が井戸の水や池に混入しないように対策されています。ただ粒剤を撒くだけではなく、溝を掘り粒剤と土を混ぜながら溝に埋め戻しています。
シロアリ駆除の基本処理【上回り処理編】
玄関や浴槽は床下部分が塞がれていることが多く、床下だけのシロアリ対策では不十分であることがあります。こういう場合は床上から処理します。床上のタイル等に穴を開けて内部に薬剤を加圧注入していきます。
処理後はセメントで穴を埋め痕を目立たなくさせます。
プロが実践している上回り処理のポイント
プロだからこそ専用機器を使用します。高圧で薬剤を注入できるタンクや薬剤を拡散させるノズルなどを使用し薬剤を散布していきます。
まとめ
シロアリ駆除のプロが行う処理について解説しました。
大切なのは、適切な箇所を丁寧に正確に処理することです。処理に乱れの部分があると、シロアリがそこに移動し、シロアリ被害別のところへ移行します。処理は専用機器のあるプロに任せるのはもちろんのこと、点検も床下などの手間のかかる場所はプロに任せるのもいいかもしれません。
床下での処理に必要な機材
第三章 シロアリを寄せ付けないためには
何度も言っているようにシロアリ対策は点検による予防が基本です。一度被害に遭うと木材は前の状態には戻りません。また、木材の本来持つ耐久性も失われます。
床下の土台や柱などを修繕する場合、工事費に高額な費用が掛かる可能性もあります。
そのために被害に遭う前に予防することを心掛けることが大切です。
シロアリが寄りにくい環境を作ることが薬剤処理のみならず重要になります。
ここではシロアリを寄せ付けないための工夫と予防方法を解説します。
まずはシロアリの生態を知る
シロアリの被害を予防する前にそのシロアリの生態を把握することが大切です。
まずはシロアリの侵入経路について理解しましょう。侵入経路については大まかに二つが挙げられます。
<侵入経路①:蟻道を通じての地面からの侵入>
蟻道(ぎどう)という土の道を作り地面から侵入していきます。立木や枯れ木、切り株、杭などがシロアリの侵入に利用されます。
<侵入経路②:羽アリによる侵入>
コロニーという巣を作るため、ある時期になると巣からシロアリが多数群飛します。
羽アリが大量に発生し被害に気付くことが多いです。群飛後に羽アリは羽を落とし、新たなる巣を作りますが湿ったところを好みコロニーを拡大させます。
続いてはシロアリが生息するのに必要な4条件です。
【栄養となる餌】
シロアリは落ち葉や枝、倒木のみならず木質材料や畳も餌にします。
【水分】
シロアリの生存には水分が不可欠です。常に高い湿度を保つところを好んで生息します。
乾燥に弱く、家屋の中では風呂場や台所、トイレや洗面所などの水回りや床下の湿っている部分を好みます。
【適度な温度】
シロアリには好む温度域があり、ヤマトシロアリは12~30°Cほど、イエシロアリは17〜32°Cほどといわれています。温度が高くなると地面に潜るなどして適度な温度域を探るために移動します。
【酸素】
シロアリも私たちと同様に酸素が必要です。
シロアリ被害の「予防」のポイントはココ!
シロアリの被害は一度でも遭うとその後の対応が素人では難しくなります。そのため被害に遭う前に予防しシロアリが寄りづらい環境を整えることが大切です。ここでは予防のポイントについて説明します。
<予防のポイント①:切り株・残材を置かない!>
→木材はシロアリの大好物であるため、木材をなるべく置かないように心掛けましょう。シロアリを呼び寄せる原因となります。
<予防のポイント②:庭にある土に触れる物に気を付ける!>
→植木鉢は特に土中からシロアリが這い上がってきやすいです。土に触れるものは防腐や防蟻効果のあるものを使用するといいです。
<予防のポイント③:水漏れや雨漏りがないかチェックしましょう!>
→屋根や外壁が水漏れするとシロアリの好む水分を与えやすくなります。シロアリは水なしでは生きれませんので常にこれらの不具合を確認しましょう。
<予防のポイント④:換気口の前に物を置かないようにしましょう!>
→換気口の前に物を置かないことで床下の空気が循環しやすくなります。そうすることで湿気の溜まりを防ぎ湿度を下げることができます。
まとめ
ここまで解説した方法はシロアリが発生していない状況での予防についてです。シロアリは土の中や木材の中に生息していることが多く気づきにくいです。そのために日ごろから予防し、気になることがあれば専門家に相談しましょう。専門家は隠れたシロアリ被害も見つけることができます。
第四章 羽アリとその対策
羽アリを見つけたときにそれがシロアリなのか見分けることは難しいです。そのために果たして見つけた羽アリがシロアリなのか不安になるでしょう。そのような時の対策としてシロアリかどうか見分けるポイントを解説していきます。
3つの特徴! 害のある羽アリはコレ!
住宅に被害を与えるシロアリとして日本においては防除の対象になっている2種類のシロアリがいます。「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」です。どちらも羽アリななった場合に特徴が3つあります。
<対策が必要な羽アリの3つの特徴>
1、触覚がじゅず状
2、前後の羽の大きさがほとんど同じ
3、体にくびれがない
基本対策! 羽アリを見つけたら
上記の3つに当てはまるなら、その羽アリはシロアリである可能性が高いといえます。大量に発生しているならば、家の被害状況が気になるところです。詳細な調査が必要になるので、専門家へ相談してください。
「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」の違い
ヤマトシロアリとイエシロアリは生息地域や羽アリになる時期が異なります。
羽アリが大量発生している場合、どちらの種類のシロアリなのか確認してみましょう。
「日本のシロアリ分布図」
:羽アリになる時期
ヤマトシロアリ: 4〜5月(ただし沖縄2月、東北・北海道6月頃)の昼間。
イエシロアリ:5〜7月の夜に群飛して電灯に飛来。
専門家の対策を待てない!
専門家に依頼するまで待てない場合、一時的な対策として掃除機で羽アリを吸い込む方法があります。浴室や玄関ならお湯によって流すのもいいでしょう。羽アリを駆除する前に数匹をティッシュペーパーなどで取り保管すると専門家が調査するときに役立ちます。殺虫スプレーは羽アリが床下に潜ることを促すだけなのであまりおすすめはできません。
羽アリを自分で駆除するのは、一時しのぎ
羽アリを駆除するのは一時的なしのぎでしかありません。発生原因を詳しく解明するために専門家に調査を依頼することをおすすめします。
シロアリではない、羽アリを知る
上記の3つに該当しない場合はシロアリではなく、アリの可能性が高いです。以下のような特徴が見られるならシロアリではないと思われるので少しは安心できます。
まとめ
触角が数珠状であり、前後の羽の大きさがほとんど同じで体のくびれがないように見えたらその羽アリはシロアリである可能性が高いです。
一時的に掃除機で吸い取ったり、玄関や浴槽ならお湯で洗い流すことも可能ですが、あくまで一時的なもので、その発生原因や完全な駆除をしない限りまた発生します。
シロアリが大量に発生した場合には必ず専門家に相談し原因を突き詰め、対策を依頼しましょう。